<p>誰もが雇用を通じて生計を立て、かつ自己の職業能力の向上を図ることができるような社会を実現するためには、従来の企業社会ともいうべき社会構造の変革が必要である。具体的には、企業が正社員に対してのみ保障してきた利益を雇用者全体に広げるために、社会が担うように改変し、正社員が雇用者における一種の特権的な地位であることを解消することを通じて、どのような雇用形態も雇用者の条件に応じた良好な雇用であることを実現しなければならない。</p>
<p>もっとも、正社員と非正社員との格差問題を両者の対立の構造とのみとらえることは適切ではない。正社員にとっても現状は満足できる雇用環境というわけではない。これまでの長時間労働も単身赴任も厭わぬ働き方は、これまでは、女性が長期的なキャリアを形成する上で大きな壁になってきた。ワーク・ライフ・バランスの実現は程遠い状況にある。正社員の状況を解決する鍵を、非正社員の雇用の改善策のなかに見つけ出していくという姿勢こそが肝要だろう。もっとも、その道筋は平坦とはいえない。社会構造の転換は、一朝一夕に実現するわけではない。相当に長い過渡期があるだろう。だからこそ、しっかりとした見取り図を社会が共有することが必要なのだ。</p> — <a href="http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-001a.html" target="_blank">島田陽一先生の「正社員と非正社員の格差解消の方向性」: EU労働法政策雑記帳</a> (via <a href="http://7season.tumblr.com/" target="_blank">7season</a>)