<ul><li>進化<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%CA%AA%B3%D8" target="_blank">生物学</a>的には<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>行
動は当該個体にとって不利に見えるので特別な説明が必要になる.このような説明には,<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CF%A5%DF%A5%EB%A5%C8%A5%F3" target="_blank">ハミルト
ン</a>による血縁淘汰・包括適応度的な説明,トリバースによる互恵行動的説明がスタンダードなものだ.</li>
<li>しかしヒトの行動を観察すると,それでは説明できない一般的な<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>的な傾向がある.これを説明しよう
として昨今注目されているのが,「間接互恵性」による説明だ.</li>
<li>間接互恵性による説明とは,簡単に言うと,「他人に<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>行為を行う人は『良い人』だという
評判が立つ.ここで『良い人に対しては<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利
他</a>行為を行う』という行動<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%AC%C8%CF" target="_blank">規範</a>が
広まっていれば,別の他人から<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>行為を受けやすくなる.その結果最終的には<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>行為を行う方が利益を得られる」という説明である.</li>
<li>しかしこのような状況は単純なモデルでは実現しない.というのは無差別に<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%F8%C2%BE" target="_blank">利他</a>行為をする戦略「allC」は,常に裏切り戦略「allD」の侵入を受けてしまう.だから支配的間接互恵戦略は,何らかの形でallDに対して不利な扱いをし,allDの侵入を防ぐようなものである必要があるが,そのような戦略は(特に認知コストがあるとするなら)allCの侵入を防げない.つまり間接互恵候補戦略はまずallCに対して<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/ESS" target="_blank">ESS</a>になり得ず,allCが増えた後は最終的にallDに侵入されてしまうという結果になるからだ.</li>
<li>これを避けるためには,何らかの形で系に振動を与えなければならない.認知エラー,行動エラー,戦略の<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%CD%C1%B3%CA%D1%B0%DB" target="_blank">突然変異</a>率あ
たりを高めてやると,この状況から抜け出せる可能性が出てくる.</li>
<li>またモデルを考える際にはこのほかに様々な細かい設定がある.戦略の複雑性に応じた認知コストを考慮するか,一般交換状況(与え手と受け手として非対称に対戦し,与え手は対戦相手に一方的に与えるかどうかを決めるだけのゲーム「ギビング・ゲーム」を行う)なのか,<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%D2%B2%F1%C5%AA%A5%B8%A5%EC%A5%F3%A5%DE" target="_blank">社会的ジレンマ</a>状況(囚人ジレンマゲームを対戦する)なのか,対戦は完全ランダムか,相手を選択する<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%D7%A5%B7%A5%E7%A5%F3" target="_blank">オプショ
ン</a>があるのか,「評判」というラベル情報を用いるのか,などだ.私の理解では,この手のモデルはこれらの条件によって様々な挙動を見せ「悪魔は細部に宿る」という状況に近いものになっている.</li>
</ul> — <a href="http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20100604#1275653437" target="_blank">書評 「利他行動を支えるしくみ」 - shorebird 進化心理学中心の書評など</a> (via <a href="http://nakano.tumblr.com/" class="tumblr_blog" target="_blank">nakano</a>)