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資料系統の設計を拡張する ― AUGMENTING DOCUMENT SYSTEM DESIGN

説明・指示・プログラムなど、仕様としてある目的をもった資料系統/DOCUMENT SYSTEMを制作するとき、系統の各要素は参照・交換の形式/FORMでその要素内外の資料と関連しあいながら設計される 本来的に「資料/DOCUMENT」は(被参照)文献資料をさすが、ここでは本文/TEXT情報の有無にかかわらず「何かを知るための証拠になりうる(=有価値な・資する)対象事物のひろく全体」を拡張的な意味での「資料・ドキュメント」とよぶ また動詞用法の「ドキュメント」はその枝義として「(証拠をつかって)明らかにする」とつかう(「バックランド資料論」*1-3に準じた用法)

工業的製品であれば、機械図面/MECHANICAL DRAWINGのツリー構造として、構成指示を網羅記述する機械図面系統/MECHANICAL DRAWING SYSTEMが構成される 部品番号を本タイトルとした機械図面では、子部品の機械図面など関連資料がその部品番号やその他資料番号で参照される また、機械図面ではないが構成指示に必要とみなす資料は、機械図面から補助図面(図面に準じる補助資料)として資料番号で参照される型式をとることが一般的である たとえば、特性仕様書(項目の例)であればその属する組図面(その対象となる組部品の構成に必要な全部品と、構成形態・組立方法・条件時の特性など付帯仕様を指示する組形態図面)から補助図面として参照され、部品購入情報を指示する購入仕様書であればその購入部品の部品図面から補助図面として参照され、回路結線図であればその属する回路基板の組図面から補助図面として参照される 機械図面系統における資料交換の例としては、枝番の入力で仕様や部品表の状態をかえて外部への仕向け種別やラインナップとする内外相互作用・反応や、広義の資料交換として計画・材料・過程を与え製品を大量生産する作用を系統の入出力とみる視点もある

これと同様に、ある目的をもった文献系統/LITERATURE SYSTEMは文献ツリー構造やその他のグラフ構造として設計できる 図書館資料目録系統*4や電子カルテなどは対象物・記録データ・更新入出力・利用規範など各種資料を参照・交換するための特定の構造や動態をもった文献系統の例といえる 系統の目的にともなう成果は外部にて受容され、また系統の仕様にふくまれる検査での合格率(歩留まり)や成績などとして評価される これらの文献系統に工業的製品むけの資料系統の規範・ノウハウを多様な水準で取り込みすることは多くの目的実現に有効だろう

資料系統設計の目的が「コンセプトの説明」のとき、参照資料として論拠(正当な原資料による論証の根拠づけ)を示すには、単行書(単独刊行書)・逐刊(逐次刊行書、EG.雑誌)・公告文書(EG.特許・政府外発)など固定化された文献を参照する方法が第1の方法である

現在は出版実体物のようにある時点で印刷物などとして固定化される資料だけでなく、たとえば電子資源/ELECTRONIC RESOURCESなど広義の文献や補助文献を広くあつかう必要がある このため、単行書として分類される種類の電子資源(EG.電子書籍)だけでなく、逐次刊行物を含んだ「継続資源/CONTINUING RESOURCES」を資料の分類項目として立て、電子ジャーナルなど半固定資料(期限などの制約はありうる)だけでなく、ウエブ資料・ルーズリーフ・データベースなどの更新される資料(含データ)を扱うとの考え方がある

継続資源を参照するには、本タイトルなどの固有情報とあわせて「バージョン名」(EG.雑誌巻号)、それを持たない場合には「参照アクセス時/ACCESSED TIMING」をもちいてバージョンを指定する方法が現在まででは一般的である しかしながら参照アクセス時をもちいた資料の参照では、後日辿れない、内容変更が不明、重複事故など資料正当性を確保できないことも多い これを避けるため参照アクセス時点の資料を複写添付(含引用)しておく方法もあるが、客観資料としての有効性にデリケートな読解判断が都度必要となるなど課題はおおい 図書館資料目録における資料参照の拡張については、各機関から継続的に外発が出されており、今後の目録系統の発展には期待ができる(*5-6)

またこれら資料論の発展は、動態やプログラムをそなえた資料系統およびそれを交易させる流通系統にたいする新機軸や、主体とみなせる仕様を実現した情報主体(EG. INFORG*7)をインタフェースをもつ資料系統との視点から新設計する方法や、機械学習モデルにおいて対象学習空間・主体・利用環境などを資料として参照・交換しあう知性構築論など、情報学であつかう様々な系統・物性・生体などにつなげられるだろう

以上、図書館情報学の現代的発展としてのバックランド資料論を起点に、資料系統の設計を拡張する方法の1つとして、工業的資料系統の規範・ノウハウを他の資料系統に取り込んでいくための素案を例示し、また資料系統拡張の未来展望を簡単に示した

なお、バックランド資料論・国際図書館連盟(IFLA)の外発文献など専門的な英文資料一般に関して、訳出日本語の揺れにより誤謬・意図などから特定部分がちがうものを指しあって議論・理解に混乱・遅滞が生じる場面を積極的に避けるためには、ある選択された特定部分の詞義・詞組義・フレーズ義に対しては現在時点で多少の不自然はあれど対応英語とその固定訳を軸にして用語を定義したり英語読みをそのまま外来語として議論に用いることで、使用詞彙の意味空間の張りなおしがあったとしてもトレードオフ的により奏効が期待できることがおおい ここのウエブサイトではもっぱら参照資料:『学術・実業むけ用語の訳語対照表』(https://t4h2.com/2024/05/14/12947/)にある対訳関係をまもる規範をためしている

参照
1バックランドEP(UCバークレー)『新・情報学入門』(MITプレス2017)
2Buckland, M.. Document Theory: An Introduction. Preprint at auther’s website, 2013. (PDF100kB: https://people.ischool.berkeley.edu/~buckland/zadardoctheory.pdf)
3Wright, A.. Cataloging the World: Paul Otlet and the Birth of the Information Age. OxfordU P., 2014.
4日本図書館協会『日本目録規則 1987年版 改訂2版』(2001)
5那須雅煕『ISBDの新たな展開 ― ISBD(M)と(CR) ― 』(カレントアウェアネス2003(275)P.4-7、https://current.ndl.go.jp/ca1485
6国立情報学研究所『大学図書館における目録実務』(2019年度大学図書館職員短期研修 PDF4MB:https://contents.nii.ac.jp/sites/default/files/2020-02/lib-03.pdf
7Floridi, L.. Information: A Very Short Introduction. Oxford Univ. Press. 2010.

(変更 2024-11-21)

図書館資料目録における資料分類項目拡張の過去提案

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