中国

詩経の読解方針

初学者として13経経書読解にアプローチするので、いくつか方針をたてて実行動を始めてみる

方針:
・まずは中国古典詩歌『詩経』 を素直に理解し鑑賞することから検討してみる
・日本古書(古書≜古代文献とした、古書э古典書の従属関係)をよむ基盤知識の修得を目的として、文選・白居易集・史記・漢書などの中国古書をえらび、内容にふれておく
・文言文(中国古代書面語文)を音読法(訓読法によらない現在中国普通話言語音読みによる黙読・誦読、または日本漢字音直接音読法での黙読)で読み、また詞語(詞+詞組)・詩文解釈・言語音の参照にはなるべく中国語の資料をつかう
・詩歌の現在中国語誦読によって、詩経採用詩歌の儀礼運用当時の伴奏つき歌唱・斉合唱または伴奏なしの徒詩朗誦は、どのような詩歌観・行事効果をだしていたかを直観で想像してみる
・詩経当時の祭祀・宮廷歌謡(頌・雅)や民謡様式の貴族歌謡(国風)について、1400年後の日本祖古代歌謡(記紀・風土記・万葉集への口伝など)と、さらに1400年後の現在伝承文化と、を流伝としてまとめてつかむ
・詩経の読解にとりくむよいタイミングをつかむ(準備・助走にはどの程度の水準をもっておきたいかを自己の例で判断)

実行動:
1、準備
(1)あたらしめの詩経まわり学術入門解説書をつかい興味をふかめる:
・小南一郎EP(京大)『『詩経』 ― 歌の原始』(「書物誕生 あたらしい古典入門」シリーズ、岩波2012)

(2)現在中国語の読解と発音をある程度マスターして古代中国語読解、中国語音韻学修得と詩歌文の誦読にそなえる:
・「中国語の読解入門」(ウエブ記事、https://t4h2.com/2022/12/28/4654/)など

(3)考究テーマ設定への前準備
・古勝隆⼀(京⼤)『⽇本の若い漢学徒は何をなすべきか』(ウエブ記事2011、参照
2023-06-16、https://xuetui.wordpress.com/2011/03/22/⽇本の若い漢学徒は何をなすべきか/
― 専門家がおす中国古典書への研究アプローチをよみ、自己の考究テーマ設定に漸次つなげていく

(4)中国古書の読解を初学者むけ教科書をつかって修得していく:
・齐佩珞『国学入门丛书 训诂学概论』(中華書局2004) ― 1940Sからよまれている訓詁学の入門書 基礎の基礎からしっかり修得できるように書いてある
・王力『古代漢語 校訂重本』(中华书局2018) ― 古語語彙を中心に古典書の読解を修得(上古音時期(『切韻』成書より前とした)における現在と違う語義をおさえる)
・Fuller, M.A.. An introduction to literary Chinese. revised ed., Harvard U. Asia center, 2004. ― 中国古典書読解に役立てるため背景と古文法を最短概説した入門書(2024年3月に新版がでる)

(5)中国語音韻学(~文言文誦読についての歴史的地域的言語音系統学)/HISTORICAL & DIALECTAL PHONOLOGY FOR LITERARY CHINESEの予備学習には、初学者むけ教科書(*1-5)も援用しながら、わかりやすい「富山大学での中国語中古音講義の配布資料」をつかう:
・中村雅之『中古音のはなし ― 概説と論考』(古代文字資料館出版物2007) ― この第1章が当該の配布資料を改訂し出版したもので、旧稿(刊行時改訂はわずか)が「1998年配布資料」として「古代文字資料館」サイト内に公開されている(参照 2023-06-26、http://kodaimoji.her.jp/内に『音韻学入門 ― 中古音篇 ― 』(PDF700KB))

2、音声データ・ピンインの選択
有聲書:中小學國文『[高]詩經讀解[完]』(男声、YOUTUBEリスト(305篇毎の朗誦音声データ)、参照 2023-06-30、https://www.youtube.com/playlist?list=PLd4Iwk1ZKUCCFK5QyY5uDfHxOq6fVhFdS) ― 声母にW(EG.文・王・忘)が音位すると(=Uの前が零声母だと)唇歯調音[v]に揺れるクセ(北京話の1相異とのこと)と而の発音が気になるが、およそ現在中国語の言語音(ここでのリファレンスは学習中の『汉语听力速成シリーズ』(2版、北京語言大学出版~2011))に合う
・汉程国学『诗经_作者佚名_诗经全文带拼音、译文、赏析』(ウエブ資料、参照 2023-06-18、https://guoxue.httpcn.com/book/shijing/) ― こどもむけ国学教科書にも全篇ピンインつきの『詩経』テキストがみつかる(たとえば『诗经』「中国传统文化经典儿童读本」シリーズ、云南大学出版社2004)

3、詩経読解へのプロセス
(1)おもに使う教科書・辞書の例:
・王秀梅『诗教』(「中华经典名着全本全注全译丛书」シリーズ、中华书局2015) ― メインの読解テキスト この「三全」シリーズは注解が淡白だが全訳がよみやすく、余白へのメモ書きにもつかいやすい
・吳澤炎他編『辞源』(修訂版全4冊、商業出版社1979-1983) ― 中国古語の語義・典故を中国語でひく辞書 日本現在語なら日国精選版の規模 日中の訓釈書にある語義説明よりも原文鑑賞について直観的に把握・納得しやすいことも多い(ただし正当な理解には、いずれ注疏書などの学史を参照しないと解像度があがらない)
・『説文解字注 附索引』(芸文印書館1980など) ― 見出し字の用例群について原義や引伸義、および当代字義の通用理由との総合関係を、清代の段玉裁がときあかしたもの 漢字への理解が深まる 詞語・詩文の解釈は、これら常見の古書訓釈、基本語義、用例、字注解にあたって自分で構築していくことがおもしろくなってくる

(2)詩経内をよむ順番:
『毛詩』内で、周頌→魯頌→商頌→小雅→大雅→国風とおよその制作年代順でよみすすめる

(3)その他の実施内容:
・『毛詩 – 周頌 – 清廟』から順番に、ピンインをつかって詩歌を現在中国語で音読(黙読・誦読)しながら読解していく 難読字・語をえらんで、『新華字典』・『辞源』・『説文注』、必要なら『十三経注疏』やその他関連書を参照しながら、字・詞語(語+詞組)まわりの資料内容を自由にしらべる
・現在中国語での朗誦ききとりとピンインをみながらの復誦をくりかえし、文言文と現在言語音と詩義とがまとまって把握できるようになるまで応答と鑑賞をふかめる
・日本古典文学との接続・関連についてなんらかの考究テーマをみつける また現在日本でのさまざまな伝承文化との関連に対しても同様

(4)詩経への取組タイミングの見極め
・王力の古代漢語入門教科書を読む前段階で、現在中国語の読解・語彙・文法・発音を知っておかないと、言語の比較ができない(先に古代語を覚えたくない)との課題がある 言語音の修得についても比較できる現在音を知っていることが必須 この意味で、詩経は十分に中国語の学習に時間をかけてから読み始めないとダメ、古い順によむのはあきらめる、との現状判断になった
・詩経は詩義が素朴で基本的だが、ある程度中国古代歴史・呪祷文化をおさえておけばさらにおもしろくよめる 中国史は●貝塚他『世界の歴史3 中国のあけぼの』(河出文庫1989)、●富谷他『概説中国史 上、下』(昭和堂2016)、●貝塚他『中国の歴史1原始から春秋戦国 』(講談社1974)、●小澤他『世界の考古学7 – 中国の考古学』(同成社1999)あたりから入るとよさそう 呪祷(含王朝祭祀・礼楽)の学術的知識は●山田統『中国文化叢書6 宗教 – 占卜と祭祀』(大修館1967)、●『岩波講座東洋思想 – 中国宗教思想1、2』(岩波1990)、また『礼記』訓釈書からしらべていくなど工夫してみる
・中国詩歌は唐詩からはいったほうが副読・関連資料の充実度からみても効果的だろう 概して児童教育課程の順序で修得・鑑賞するのがいいとわかった またおとなむけの漢詩からはいるなら蘅塘退士編『唐詩三百首』がしぶくてよい 原出所不明(北京大学BBSに改変文転載あり)の『北京大学中文系课程教材及参考书目(整理版本).doc』(本サイト内にPDF直接リンク、1MB)という文書にも、中国古代文学 – 作品の項にて唐詩三百首を熟読するのが唐詩への第一歩と意見がついている

参照
1李思敬(慶谷寿信・佐藤進訳注)『音韻のはなし』(光生館1987、訳注がくわしく定評がある、初版正誤表、大学図書館でみつかる、原著はコンパクト書の『音韵』「汉语知识丛书」シリーズ、商务印书馆1985(重印版2001))
2陈复华『汉语音韵学基础』(中国人民出版社1983)
3藤堂明保他編『音注韻鏡校本』(木耳社1971、初版正誤表
4Branner, D.P.. Literary Information in China: A History – RIME TABLE, ColumbiaU Press, 2021, p. 65-77. Download link at a website (PDF3MB): https://www.researchgate.net/publication/369280074_Rime_Tables
5平山久雄『中国文化叢書 1言語 – 中古漢語の音韻』(大修館1967、P112-166)

(変更 2024-04-26)

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