李白「古風59首 – 其1」
1、目的
語学と漢詩の初学者学習のため、李白の詩歌を題材に現在中国語での朗誦音声データと、朗誦を聞きながら目で追い音をおぼえて誦読するための漢字正文へのピンイン注音と、のよい組、および訓釈の例などについてメモをのこす(シリーズ目録:『漢詩の杜』https://t4h2.com/kanshi/)
2、朗誦音声データ
下記ピンインと、学習中の語学テキスト『汉语听力速成・入门篇』(2版、音声データCD付属、北京語言大学出版2011)での発話音と、演播者の朗誦音声と、が極力合うものを選んだ
●零贰捌贰玖『【零贰贰】古风五十九首·其一』(男声、bilibili1’28”、参照 2024-08-22:https://www.bilibili.com/video/BV1q44y1r7zc/)
●白云出岫『全唐诗-李白』(男声、喜马拉雅、参照 2024-11-17:https://www.ximalaya.com/album/23800581)
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3、簡体字正文+ピンイン注音
古风五十九首其一
大雅久不作,吾衰竟谁陈。
王风委蔓草,战国多荆榛。
龙虎相啖食,兵戈逮狂秦。
正声何微茫,哀怨起骚人。
扬马激颓波,开流荡无垠。
废兴虽万变,宪章亦已沦。
自从建安来,绮丽不足珍。
圣代复元古,垂衣贵清真。
群才属休明,乘运共跃鳞。
文质相炳焕,众星罗秋旻。
我志在删述,垂辉映千春。
希圣如有立,绝笔于获麟。
4、メモ
●この演播者はピンインYUAN(EG.怨元円園援縁猿原員垣)の発音が[yan]でなく[yɛn]になる 一般に女声よりは男声の方が調音[y]の後続は比較的[ɛ]に近づきやすい傾向があるのかもしれない(北京語言大学『汉语口語速成・入门篇』の普通話音声データ吹込男女では女声[a]に対し男声は[ɛ] – [æ]の範囲に近づく しかし必ずしもこうならない他の朗誦例も多い)
5、訓釈例
●訓釈(中国語での阐释/対応日本字闡釈と同義)の「訓」は、斉『訓詁学概論』と段『説文解字注』とによると「事物のありさまを人に言葉で告げて明らかにする」こと つまり訓詁における「訓」は古字古言の音と義の解釈を言語化して人に説明/EXPLANATIONすることをさす 訓釈の方法の1に、原著の正文/MAIN TEXT(ここではテキスト/TEXT(≜本文)のうち注文/ANNOTATIONや付記付録を含まない主部分を指す 古く白文とも)の1部分を指定してそれを解釈し、別の詞語/EXPRESSION(「詞語」は中国語語法における詞と短語との全体 短語の大半が詞の組合である詞組であり短語は他に成語なども含むとするのが語法上定義の1)でやさしく言い換えて文字として注記/NOTEする「注解(ひろく一般に注釈とも)」という書面化方法がある つまり説明の言語化が「訓」でその書面化が「注」といえる 字典における字義説明部分も「注解」の例の1である(『新華字典12ED – 凡例』に用語として載る)
●訓釈法のさまざまな具体例としては、教義・叙述やそれを書面化した文章についての「質疑応答」(これの書面記録が訓釈文の最古形態だろう EG.春秋2伝や仏伝)や正文の解釈をその部分に逐次対応させながら説明する「口述講義」などといった口頭叙述によるものと、正文の部分の解釈を説明した注文(注解文とも)を正文との連続・正文の欄外・正文とは別冊にて書面化した「訓釈書」(訓釈∋注解の関係 多くの古代の「注釈書」(EG.注疏)と異なり現在では全訳や考察など注解以外の部分を多分に含むため訓釈書とした)としてまとめたり、正文の全訳・部分訳により解釈を書面化する「翻訳書」としてまとめたり、多くの文献における詞語の訓釈を同義詞や見出し詞をもちいて訓詁書(EG.爾雅・経籍籑詁・古代語詞典)ほかの「工具書」としてまとめ正文を読むとき参照できるようにしたり、正当な解釈をした上での批評/CRITIQUEや考察/CONSIDERATIONを評語・議論などの「文書」としてまとめるなど、いわゆる注・訳・論といった様々な方法での文献化(献はひろく差しだして公開する義)によるもの等々があげられる
●「物・もの、中国語で物・東西、英語でTHINGなど」は話題にできる認知対象の概念すべてをさすことができるものとここでは扱う 物≜事物のうち、現象・活動(つまり作用)の部分を特に「事・事情」ともあらわし、対して物理的な客観存在(たとえば見なくても形としてなぞったりできる対象)の部分を更に別に「[物]体、英語でSUBSTANCE・MATTERなど」とあらわすのが一般的だろう(慣用詞としての「実体」の利用も多い) この詞「物」の説明には、古い出処に『列子 – 黄帝』(戦国時代)“凡有貌象声色者皆物”があり、被認知特性をもつ対象はすべて「物」であるとする
●詞「注解」の出処には、孔穎達(唐)『尚書正義 – 尚書序』“佐成序義 明以注解故”があり、他に『史記集解 – 五帝本紀冒頭』(南朝宋代)や『晋書 – 杜預伝』(唐)がある 対して「注釈」の出処には『顔氏家訓 – 書証冒頭』(北朝北斉代)など同時期の古書があがる 今語では同義であり使い分け規範は特になさそうだ
●また「解釈・解・釈」/INTERPRETATIONとは、正当な理解/UNDERSTANDINGと鑑賞/APPRECIATIONのために対象を解き明かすこと(思考的操作)をさすと一般に言える
●ここでの訓釈例(詩篇を説明する具体例)には、上記説明した訓釈書、翻訳書、論文など文書、工具書・学術書、これらの組(全注全訳書など)をなす資料/DOCUMENTをあげた
―武部利男P(立命大)『李白下』(中国詩人選集7、岩波1958、P.2.132)
―钱志煕P(北京大)他『李白诗选(古代诗词典蔵本)』(商务印书馆2016、P.1-3)
(変更 2024-11-28)
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