李白 – 静夜思
1、目的
初学者学習のため漢詩の現在中国語朗誦音声と、あわせて誦読するためのピンインと、訓釈の例と、をメモにのこす(シリーズ目録:『漢詩の杜』https://t4h2.com/kanshi/)
2、朗誦音声データ
学習中の『汉语听力速成・入门篇』(2版、北京語言大学出版2011)での発話音と演播者の朗誦音声が極力合うものを選んだ
●张泓(Hong Zhang)『1 静夜思 | Thoughts on a Still Night』(女声、YOUTUBE0’53”、参照 2023-05-28、https://youtu.be/Xox7QeAwsDk)
3、簡体字正文+ピンイン注音
静夜思
床前明月光 , 疑是地上霜 。
举头望明月 , 低头思故乡 。
4、関連情報
●中国の一般書ではこのように前段に明月光(元は「看月光」)・後段に望明月(元は「望山月」)と作られることが多く、例えば『唐詩三百首』(C.1763)の様に清代になってからなぜかそう好まれる場合がおおくなったとのこと(CF.松浦『唐詩解釈辞典』1998) また詩題には「思夜」と「静思夜」とある
●「寝所の床の上の明月の光」と解釈すれば、寝所の床の上には(部屋が寒すぎて)霜がおりその反射光がキラキラと発出しているよとの詩義になり第1句全体(床前の明月の光)を疑う(ここでは~と見間違うほどそっくりの義)の第1目的語にできる点と、明月の光と地上の霜とで修飾つき事物の対句になる点と、故郷をおもう景物は月のみでよく山は不要ともできることと、がここでの異文の愛誦される理由の1だろうか なにか音のひびきの魅力として舌背奥閉鎖の鼻音調音[ŋ]に秘密があるのかもしれない(看・山は舌背前閉鎖の鼻音調音[n]になる) が聞いてもわからない
●床には井台(井床とも、井戸穴の周囲を補強する枠部分からなる小広場)との解釈もあり(出処の1:ウエブ記事『看古井 说井栏 与古代的“窗” “床” “井床”』参照 2025-03-25:https://zhuanlan.zhihu.com/p/542728519)、井台の上はまるで霜が降りているかのように月の光がそこで散乱して井戸のあたりはキラキラと輝いているよと景物を観ていることになる また窓前にて月を眺める挿絵がつくことも多いが床CHUANG2と窓(窗)CHUANG1の発音類似に何故か関係しているようだ(床の前より窓の前の方が月と故郷を思う遠景とを同時に眺められるからだろうか)
5、訓釈例
●田部井文雄P(千葉大)『唐詩三百首詳解 上』(大修館書店1988、P.1.230)
●松浦友久P(早大)編『校注 唐詩解釈辞典』(再版、大修館1998、P1.678)
●前野直彬EP(東大)編『唐詩鑑賞辞典』(18版、東京堂1998、P205)
●武部利男P(立命大)『李白下』(中国詩人選集7、岩波1958、P2.120)
●钱志煕P(北京大)他『李白诗选(古代诗词典蔵本)』(商务印书馆2016、P80)
(変更 2025-04-19)

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